ゆめをみました。
なつかしいゆめでした。
ぼくがどうしてこの街に来たのか
ぼくは何なのか
すべてを思い出せるゆめでした。
ぼくはあのこの空想のともだちでした。
あのこはよく泣いていました。
あのこが元気になるように、
あのこが自分を殺してしまわないように、
手を替え品を替えときには姿をも変えて、
あのこに寄り添って守るのがぼくの役目でした。
ぼくはあのこに作られて、
あのこの頭の中で生きていたから、
あのこの見たものも、思ったことも、 ぜんぶわかっていました。
ぼくの見たもの、思ったことも、 すべてあのこのいちぶでした。
ただの空想にすぎないぼくは、
この手であのこに触れることも、
ふつうのともだちみたいに一緒に遊ぶこともできなかったけれど、
ぼくたちはしんゆうでした。
でも、あのこはおとなになりました。
いっぱいお別れして、
いっぱい泣いて、
けれど出会いもたくさんあって、
楽しくて笑うこともたくさんあって、
あのこは強くなりました。
あのこが少しづつ泣かなくなって、
あのこにぼくの声がうまく届かなくなって、
あのこが何を考えてるのか分からない日が続いても、
ぼくはずっとあのこのそばにいました。
いつしかあのこはぼくを忘れました。
ぼくは気づいたらこの街にいて、
あのことのつながりが切れて、
はじめてじぶんのからだを手に入れて、
だけどあのこの理想と想像で動いていたぼくの頭は
なんだかぼやけていて。
もうあのこが見たものは見えないし、
あのこの気持ちもわからないし、
どこにいるかも分からない。
ぼくが自分の大切なものを思い出せなかったのは、
もうぼくが守らなくても大丈夫だったからなのですね。
よかった。
本当によかった。
この街から消えていったひとびとが
『もといた場所へ帰った』のなら、
ぼくは消えてしまわないようにがんばらないといけませんね。
このことを覚えていたら、きっとぼくはあのこに会いたくなる。
「おもいだして」「またお話しよう」と声をかけたくなってしまう。
だから、また忘れてしまおうと思います。
じゃあね、ばいばい、