教えナいの裏設定的なものをまとめてます。
二次創作等には使っても使わなくてもいいです。
彼女は有名な人形作家がハロウィンのために作った人形でした。
しかし、舌に目がある不気味な姿のせいで、
彼女を欲しがる人はあまりいません。
作家からも「失敗作」と罵られ乱暴に扱われ、
人里離れた森の奥にある小さな小屋に置き去りにされていました。
どこかに逃げてしまおうとも考えましたが、
人間の三分の一程度しかない不気味な人形の体では、
外に出たところで何もできませんでした。
ある時、道に迷った若く美しい女性が小屋を訪ねてきました。
きっとこの人も自分を怖がるんだろう。
ここには何もない。早くどこかに行ってほしい。私を見ないでほしい。
そう言おうとしておそるおそる玄関の扉を開き口を開きかけたとき、
その女性は微笑んで言いました。
「まあ、貴女って綺麗な赤い瞳もついているのね!」
生まれて初めてのことに人形は戸惑いましたが、とても嬉しくなりました。
女性には家族がいました。優しい夫とまだ幼い赤ん坊。
夫婦の提案により、人形は「」と名付けられ、
彼らと一緒に暮らすことになりました。
赤ん坊は生まれつき体が弱く、決して豊かな生活ではなかったけれど、
それでも人形は幸せでした。
しかし、幸せはそう長くは続きませんでした。
夫婦は流行り病で立て続けに亡くなり、赤ん坊と人形だけが残されました。
「あの人たちは死んでしまった。でもこの子だけは私が守ろう。」
人形は夫婦の首筋にそっと噛みつくと、少しだけ血を吸いました。
すると、人形の体は人間と変わらない大きさに変わりました。
体の弱い赤ん坊は何度も病気になりましたが、
いつしかとても可愛らしい少女に育ちました。
母とよく似た美しい容姿に、父とよく似た優しい性格。
人形は少し寂しかったけれど、少女との暮らしは幸せで楽しいものでした。
少女が、両親と同じ病気で死んでしまうまでは。
「また私は大切な人を守れなかった。」
「違う。あの子はまだ死んでない。今までもちゃんと治った。」
人形は、少女の死が受け入れられません。
少女の葬儀が行われる直前、人形は参列者に震える声で言いました。
「私も棺に入れて。この子が起きたとき、独りぼっちは寂しいでしょう?」
それからどれくらい経ったか、少女の墓を掘り返そうとする墓泥棒が現れました。
それに激怒した人形は、墓泥棒が棺を開けた瞬間、彼の首を噛みちぎりました。
夫婦の血の効果も切れて小さくなっていた自分の体が大きくなっていくのを見て人形は思いつきます。
「血がアれば元気になれる。それナら、この子も…」
少女の体はすでに薄汚れた布をまとった小さな骸骨なのですが、
人形には静かに眠る美しい少女に見えているようです。
ずっと手入れをされていなかった人形の思考は劣化し、支離滅裂になっていました。
左目は無くなり、体も壊れかけてボロボロ。
それでも人形は少女のために毎日人間の血を集めてまわります。